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昔ながらの街並みと大阪の今が交錯する中崎町を歩く

梅田からは地下鉄でひと駅。北新地から歩いても20分ほどでたどり着く中崎町。繁華街に隣接した町ながら、戦前の木造建築や長屋が残る下町情緒あふれ、古民家を改装したカフェやショップも多く建ち並びます。今や大阪を代表する若者に人気のエリアは、旅行者が歩いても存分に楽しめる町。今回はこの古くて新しい中崎町を紹介します。

戦火を逃れた昭和レトロな町

中崎町は、第二次世界大戦末期の大阪大空襲の戦火を奇跡的に逃れたため、大正や昭和初期に建てられた木造住宅や長屋が残っています。
ノスタルジックな街並みの後ろには高層ビルやマンションがそびえ立ち、まるで都会の中でここだけが時代に取り残されたような昭和感が味わえます。
また、戦後に土地の区画整理も行われなかったため、狭く入り組んだ路地が今なお多く、路地の先になにがあるのか、まるで迷路のように町歩きが楽しめます。

個性豊かな店に出会える

下町と呼ばれる地域は、住民の高齢化が問題になりがちですが、中崎町も同様に一時は住民の高齢化が進み、空き家が目立つようになっていました。しかし2000年前後から、ノスタルジックな街並みやキタエリアにしては家賃が手頃なことに目をつけたクリエーターや若き店主がショップやカフェ、ギャラリーを開き、息を吹き返すように。さらに古民家や長屋を再生した店ができることで、訪れる人も増え、町自体が活気にあふれるようになりました。

例えば、中崎町駅前から東にのびる天五中崎通り商店街は、以前は昔ながらの商店が並ぶ地元ユースな商店街でしたが、現在は、行列のできるさつまいもスイーツ店やかき氷屋さんなどが並び、賑わいをみせています。

さらに、JR京都線の高架下は再開発され、カフェやバルなど、飲食店が軒を連ねています。また、この界隈は古着屋さんが点在し、個性的なおしゃれに身を包む若者も多く見られます。

町の縮図と言うべき喫茶店へ

この町のことをさらに知るため、中崎町で約40年続く喫茶店 ニューMASAの店主に話をうかがいました。
実は現在の店主は4代目。2011年に喫茶 正を常連だった2代目が引き継ぎ、ニューMASAとしてリニューアル。以来、2019年に3代目、2020年に現店主である古家慶子さんへとバトンが渡されました。

「自分の店をしたいと思っていたタイミングでご縁があって4代目店主になりました。店には初代マスターの頃から通っている80歳をこえる方もいらっしゃって、私よりこの街のこともこの店のことも詳しいんです」と、古家さん。
中崎町は下町風情があり、元々好きな場所だったそうですが、店を始めてさらに下町の優しさを感じているそう。
「コロナ禍以前、中崎町には、外国人ツーリストや日本人観光客も多く訪れていて、店にもそういう方々がたくさん来てくださっていたそうです。でも私が店主になった昨年4月はコロナ禍真っ只中で、お客さんがぐんっと減って。そんな時、ご近所さんが『大丈夫?』『しっかりしいや』ってちょくちょく顔を出してくださって、それがすごい支えになりました」

受け継がれて続いていく中崎町らしさ

古家さんが店を引き継ぐ際、条件が2つだけあったそうで、1つは昭和の喫茶店のような店の雰囲気を壊さず、守ること。そしてもう1つは初代から出しているコーヒー豆でコーヒーを淹れることだったそう。
「2つの条件以外は好きにしていいって言われて、私の代になって、オムライスやナポリタンを出すようになったり、メニューはいろいろ変わっています。私もいずれ店を離れる時はこの町や店の雰囲気をわかってくれる方に受け継いでもらおうと思っています」

店内は、40年近く通うご近所さんもいれば、奇抜な髪とファッションの今ドキ男子もいたり、そのカオス感はまさにこの町そのものと言った風。
最近は、大手資本の店が参入してきたり、ハヤリや映えを狙った店も増えてはいますが、それでもなおこの町には、この町が好きでこの町らしさを大事にする店主とそれを見守る住人がいます。
そんな”共存共栄”感こそがこの町の魅力なのかもしれません。

記事の内容は掲載日 (2021年10月) の時点の情報です。

INFORMATION

ニューMASA

大阪市北区中崎町西1-1-16
☎06-6373-3445
11:00 am - 6:00 pm

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