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上方落語の寄席で上方言葉や風俗、気質に触れる

文楽や歌舞伎など、大阪には、さまざまな伝統芸能が息づいています。なかでも上方落語は、楽しく笑って、上方言葉や文化を学ぶことができる、肩ひじ張らない伝統芸能です。そして、そのメッカが天満天神繁昌亭。こちらで寄席を実際に体験しながら、上方落語の魅力をひもときます。

上方落語唯一の定席へ

そもそもこの天満天神繁昌亭ができたのは15年前と、意外に歴史が浅いことに驚きます。こちらが開館する以前にも、吉本や松竹の舞台、そして米朝事務所のホール落語会はありましたが、いつでも落語が聞ける定席はありませんでした。そこで、上方落語協会が戦後60年ぶりの復活を目指し、奔走。2006年、大阪天満宮から用地を提供してもらい、北鳥居のすぐ近くに寄席を構えることになりました。
奇しくも、この辺りはかつて「天満八軒」と呼ばれ、寄席や芝居小屋がひしめいていて、そのうちのひとつ「第二文芸館」という小屋は吉本興業の発祥地だったそうです。

上方と江戸の落語には違いあり

まずは大阪・京都を中心とする「上方」で演じられる上方落語と、東京を中心に上演される「江戸落語」の違いについて、上方落語協会会長、笑福亭仁智さんに教えてもらいました。
「上方落語と江戸落語はそもそも起源が違うんです。どちらも江戸中期に始まったのですが、江戸がお座敷に呼んでもらって披露するお座敷芸なのに対して、上方は、生国魂神社の境内で繰り広げた話芸が始まりで、通りすがりのお客さんをつかまえて話をしてお金をもらっていたんです。ですから発祥当時は、江戸落語のお客さんは男性がほとんどでしたが、上方落語は老若男女もいたわけです。内容も、江戸落語は武士をヒーローにした勧善懲悪なストーリーが多いのに対して、上方は、世話物が主流でした。そのため、親しみやすく、初心者の方にもとっつきやすいと思います」
そのほか、上方と江戸では演出や道具にも違いがあり、上方落語では見台という小机や小拍子が使われ、噺の最中に三味線や笛、太鼓が入ることがあります。
「小拍子を見台にカチンッと打ち鳴らすことで、動きや仕草を強調したり、場面転換を印象づけたり、はたまた寝ているお客さんを起こすのにも役立ちます」と、ニッコリ笑う仁智さん。
天満天神繁昌亭は昼席と夜席があり、昼席は若手からベテランまで週替わりで、1日8本公演に。そして、夜席は独演会や一門会など、落語家が主宰となる会が行われることが多いそう。
「昼席は落語の入門編みたいな演目が多く、雰囲気も気楽だし、落語を初めて鑑賞する方におすすめです。そして落語を聴くうちに気に入った落語家ができたり、聴いてみたい演目がでてきたら、夜席にも足を運んでみてください」

いよいよ昼席を鑑賞

訪れた日の前座 (トップバッター) は桂小梅さん。「えげつないな」「あきまへん」「そんなあほな」など、当たり前ですが大阪が舞台のネタなので、大阪弁のオンパレード。今では地元の人でもあまり使わなくなった上方言葉も飛び出し、その軽快さが楽しく、公演後、ちょっとマネしたい衝動にかられたほどです (本当に真似して使うと大阪人に嫌がられるのでご注意を)。
二ツ目、桂小鯛さんの演目は初心者でも知ってる古典落語の名作、時うどん。これは江戸では時そばと言われるもので、演目名の違いだけでなく、ストーリーも少し違うそう。

公演中、人前で声をあげて笑うことになれてないと意外に笑えないものだと気づかされます。斜め前の寄席に通い慣れていそうな年配の男性は、いいタイミングで絶妙な笑い声をあげていて、さすがと思わずにはいられません。
「大阪人はお金を払った分、笑う気満々で聴いてくれます。お客さんの笑いが大きいと落語家も乗ってきますし、寄席は、お客さんと落語家が同じ時間を共有して作り上げるものなんです」(仁智さん)
そのため、その日の寄席の雰囲気を見てからネタを決めることも多く、パンフレットにも出演者の名前はありますが、演目名の記載はありません。

「寄席に来たら身を任せ、想像力をたくましく、楽しんでください」という仁智さんの言葉通り、聴く側も想像力を膨らませるほどに引き込まれます。
訪れた週のトリは、偶然にも仁智さんであり、仁智さんの笑いを交えた巧みな情景描写に聴き入っていると、頭の中に映像がどんどん浮かんでくるほどでした。

昼席公演は全8本。そのなかには色物とよばれる落語以外の芸が必ず2つ入るそうで、訪れた週は漫才とコマ回しが披露されました。
始まる前は正直「ちょっと長いな」と思っていましたが、いざ始まるとあっというまの2時間半。
落語を鑑賞してから、その噺の舞台となった大阪の街を巡るのも、楽しいかもしれません。

記事の内容は掲載日 (2021年10月) の時点の情報です。

INFORMATION

天満天神繁昌亭

大阪市北区天神橋2-1-34
☎06-6352-4874
昼席 2:00 pm - 4:30 pm頃
全席指定: 前売2,500円、当日2,800円
https://www.hanjotei.jp

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