Nov 4. 2020#Culture

大阪の息遣いを感じさせる本を読む

「夜の社交場」と言われる北新地の西側に隣接する堂島。江戸時代に大阪繁栄の基礎を作った米問屋が開設されて以来、商業やビジネスの街として知られてきた町で、大正昭和初期のレトロビルが点在するのも魅力のエリアです。そんな築50年以上を経たリノベーションビルのひとつの2階に、ユニークな書店があります。その名も〈本は人生のおやつです!!〉。店主の坂上友紀さんは、この古いビルの雰囲気が気に入ってこの場所に決めたと言います。

「ここでお店をやるようになってから、地域の方々が道端のお地蔵さんをいつもきれいにしてはったり、盆踊りや節分などの行事をずっと大切に続けていたりと、堂島の知らなかった一面を発見して、ますます惹かれています」

店主が惚れ込んだ本を売る書店

店内には、古本と新刊書の両方がぎっしり。そこには、近代・現代文学を中心に、デザイン本、ここでしか手に入らないZINEなど、本好きがわざわざ訪れるというのも納得な、店主のセレクトが光ります。

「この棚は知る人ぞ知る近代作家の古書ですが、この辺のジャンルがお好きな方がいてるんですよ。あと、以前はこの辺りには広告代理店さんがあってデザイン事務所が多かったのでデザイン関係の本は結構多いかもしれませんね。新刊書については、私が惚れ込んで『絶版になるまでうちで売ろう』と決めているもので、売れたらまた同じものを仕入れて常時店頭にあるようにしています」

大阪滞在中、あるいはその前後に読みたい「大阪本3冊」

この書店の特徴はそのラインナップだけでなくもうひとつあります。それは、読書カウンセリングというサービス。客の好みや要望などを聞いて、坂上さんが本を選んでくれるというものです。

「気軽な『どんな本を読んだらいいですか?』という相談から、『自分で選ぶと偏ってしまうので、人に勧められる本を読んでみたい』と依頼されるお客様もいます」
中には、定期便(複数冊を一定の期間でお送りする)で読書カウンセリングを利用している人もいるそう。店主がオススメしてくれる本が、新しい興味の扉を開けてくれるのです。

そこで坂上さんに、〈Zentis Osaka〉に滞在する方におすすめの本を選んでもらいました。選書のポイントは、大阪を自分流に味わうヒントになるような、またインスピレーションを与えてくれるような本です。
「大阪が舞台であるだけでなく、空気感や“らしさ”を楽しんでもらえるものを選びました」

その1:関西出身の作家による昭和〜平成の大阪を舞台にした小説

まず1冊目は、関西出身の作家による女の一代記的な小説『グランドシャトー』(高殿円著/文藝春秋)。

「1960年代の高度成長期から平成を舞台にして、その時代を生き抜く女性の姿を描いているのですが、大阪人が読むといろいろ『分かる』のが面白い。例えばタイトルの『グランドシャトー』は主人公が働く大阪京橋のキャバレーの名前なのですが、実際に1文字違いの〈グランシャトー〉というキャバレー(写真背景)が京橋にあるのは大阪で育った40代以上の人はみんな知っています! 今も流れているそうですが、昔テレビでよく〈グランシャトー〉のCMが流れていたからなんです。また、主人公たちの暮らす町は北新地や堂島からも徒歩で行ける中崎町。昔ながらの長屋が今も残っているので、小説の世界を実際に歩いて味わっていただけると思います」(坂上さん)

その2:大阪人のユニークな視点に夢中になる写真冊子

2冊目は自費出版の写真冊子、『銭湯下足札コレクション1』(けんちん著)です。表紙は銭湯にある昔ながらの下駄箱の鍵の写真ですが、実はこれ、関東と関西で少しデザインが異なるのだそう。表紙の写真は関西のもので鍵の木札を右斜めから差し込むようになっていますが、一方関東は木札を真上から差し込むタイプが多いとのこと。そこに着目して大阪の銭湯の下駄箱の鍵を撮影して集めたのが、著者のけんちんさん。団地や銭湯をこよなく愛する大阪在住のサラリーマンで、全国の銭湯や団地をめぐる活動をしている方だそう。

「その独自の視点にファンが多くて、けんちんさんの冊子は店頭に並べると売り切れてしまうんです。こちらに掲載しているお風呂屋さんの多くが現在も営業中のようなので、これをガイドに銭湯巡りをするのも面白いかもしれません」(坂上さん)

その3:大阪人が愛する大阪の作家といえばこの人!

そして坂上さんが、「大阪を味わう本といったら、やっぱりオダサクは欠かせません!」と熱く紹介してくれたのが、大阪の人々や暮らしを生き生きと描いた昭和の無頼派作家、オダサクこと織田作之助の『夫婦善哉 決定版』(新潮文庫)。

「オダサクの描く大阪人や街は、大阪人が納得するありようなんです。うんうん、おるなぁこういう人、とうなずきながら読んでしまう。そういう普遍的な大阪人が描かれているのに加えて、大阪の食べ物がいろいろ登場するところも、まさに『味わう本』という点で魅力的です。主に大阪ミナミの店が多いですが、このすぐ近所にも、この本に収録されている短編『アド・バルーン』に出てくる〈出入橋きんつば屋〉という甘味処(写真背景)が今もありますので、ぜひ寄ってみてください」(坂上さん)

これらの本は、〈Zentis Osaka〉2階のRoom001に置いてあります。ぜひ手にとって楽しんでください。

INFORMATION

本は人生のおやつです

大阪市北区堂島2−2−22堂島永和ビルディング206
月・火・金12:00〜20:00
土日祝11:00〜18:00
水木定休

RELATED POST

一覧に戻る