Nov 4. 2020#Food

大阪駅前ビルでコーヒーの香りと昭和レトロを味わう

明治時代初期(1870年代)には、すでに外国との貿易の拠点となっていた大阪や神戸。多くの外国人が行き交い、その文化を取り入れてきた関西は、コーヒー&喫茶店文化の発祥の地だと言われています。大阪では特にビジネスシーンにおける憩いの場、あるいはオフィス外の商談の場として喫茶店は愛されてきました。今もその数は日本一です(*)。

「でも、個人のお店は随分減ってしまって。このあたりもチェーン店がだいぶん増えましたね」

と話してくれたのは、1947年創業の喫茶店〈マヅラ〉のオーナー劉盛森さんの三女で、同じビルにある喫茶店・バー〈King of Kings〉の支配人を務める劉由紀さんです。

「King of Kingsというのは、ウィスキーの名前です。父が日本の輸入代理店をしていたので、その名前からつけました。マヅラというのはインドネシアの島の名前。なぜこの名前なのか?……父が好きなんじゃないでしょうか(笑)」

大阪らしい喫茶店が残る大阪駅前ビル

今回おじゃまさせていただいた〈マヅラ〉もその姉妹店である〈King of Kings〉も、大阪駅や梅田駅から北新地方面に向かう途中にある「大阪駅前第1ビル」に入っています。駅前ビルはほかに「第2ビル」「第3ビル」「第4ビル」まであり、それらの地下は飲食店街になっていて、居酒屋やレストランなどのほかに喫茶店もいくつもあります。

昭和レトロな佇まいの店が多く、コーヒーはもちろんクリームソーダや大阪の“ソウルドリンク”であるミックスジュースなどの正統派な喫茶店メニューを掲げているのが特徴です(ちなみに、一般的にミックスジュースというと複数の果物の果汁を使ったフルーツジュースを意味するかもしれませんが、大阪ではミックスジュースはバナナやみかん、りんごやパイナップルなどの果物に牛乳と氷を加えてミキサーで混ぜ合わせた飲み物のこと)。

令和の若者を魅了する昭和レトロの記憶

「うちは1970年にこのビルが建った時から営業しています。ビルが建つ前は、この土地で喫茶店を営んでいました。1970年というのは大阪万博の年で、父は大阪万博にインスピレーションを受けて内装をこういうふうに、近未来っぽく作ったんですよ。前回の大阪万博の時は、アポロ12号が持ち帰った月の石が展示されたりして、宇宙開発展示が話題でしたから」

以来、劉さんが見つめてきた大阪駅前ビルの喫茶店を訪れる人たち。いつの時代も変わらず「思い思いに」喫茶店での時間を過ごしていると言います。

「最近は、こういう内装が『かわいい』とか『懐かしい感じ』とか言って、若い人もいらっしゃいますけれど、元々は通勤途中に立ち寄るお客さんがメインでしたね。ここができた1970年ごろは、まだそんな豊かではない時代だけど、希望はたくさんあった時代。会社勤めの人たちが、仕事帰りに『お茶して帰ろか』と仲間と喫茶店に寄られて、ちょっとした贅沢な時間を味わうわけです。そしてコーヒー1杯片手に、夢を語り合う。昭和の喫茶店はそういう場だったんですよ」

だから、「喫茶店のない街なんて」と、劉さん。

「喫茶店は今もなくてはならない場所だと思います。忙しい日々の中で、ちょっとしたゆとりを感じられる場所ですから」

今日も大阪駅前ビルの喫茶店には、サラリーマンから学生まで、多くの人が一息ついています。この街の雰囲気を感じてみるならば、コーヒーかミックスジュース片手に喫茶店で小一時間過ごしてみるのも良いのではないでしょうか。

* 平成28年度総務省センサス、8680店舗。第2位は愛知県7784店舗、第3位は東京6710店舗(人口千人当たりの店舗数だと高知県が1位で大阪は5位)

INFORMATION

マヅラ喫茶店 / King of Kings

<マヅラ喫茶店>
大阪市北区梅田1-3-1大阪駅前第1ビルB1F
9:00〜21:00、日祝定休

<-King of Kings->
大阪市北区梅田1-3-1大阪駅前第1ビルB1F
12:00〜23:00、日祝定休

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