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本を所蔵する建築を愛でる

北新地にあるZentis Osakaから堂島川を渡った先の中之島は、明治大正時代から、行政と経済、そして文化施設が集まるエリアとして発展してきました。そのため、1903年竣工の日本銀行大阪支店旧館や1918年竣工の大阪市中央公会堂など、近代日本建築を代表する名建築が今も残っています。なかでも、ギリシア神殿を思わせる円柱に大きな三角破風が特徴の威風堂々とした佇まいが際立つのは〈中之島図書館〉です。

入り口の上には、開館当時の名称「大阪図書館」の文字が掲げられています。この図書館は、近代大阪で財を成し日本を代表する財閥となった住友家が建築し大阪府に寄贈したもので、1904年に開館しました。古文書や地域資料を所蔵するだけでなく、近年はビジネス向けの情報提供も行うなど、市民に向けたさまざまな活用を展開しています。

中に入るとこの建物の特徴であるドームの下に吹き抜けのホールが広がります。外観の荘厳な石造りに対して、この木製の階段の描く優美な曲線が印象的です。

左右に広がる建物の両翼の部分は、閲覧室やカフェになっていて、100年の時を経て今もなお広く市民の文化施設として活用されています。

そして2020年7月に、この中之島にもうひとつ本を所蔵する名建築が誕生しました。〈こども本の森 中之島〉です。こちらはその名のとおり、子どもたちに本との出会いや本を通じた興味関心との出会いを届ける文化施設で、開放的な吹き抜けの3階建ての館内には独自の12のテーマにそった1万8千冊の本を所蔵しています。

この建物の特徴は、コンクリート造りの建物のフォルムにも中の書棚にも、ゆるやかな曲線が多く用いられていること。これは、外を流れる川の流れをイメージしたものだと言います。また、書棚と書棚の隙間には外が見える細長いスペースがあったり、頭をぶつけそうな階段下に絵本コーナーがあったりと、遊び心がたっぷり詰まった空間になっているのです。

この施設を設計したのは、大阪出身の建築家・安藤忠雄さん。「子どもたちの感性と想像力を育む場」として設計し、大阪市に寄付した図書施設です。

安藤さんのお気に入りだというスペースが、小さな円筒状のコンクリートの部屋。高い天井の丸い穴から光が差し込み、まるで高い塔の中にいるような気分になります。この空間には本も何もありませんが、妙に心が落ち着きます。そして時折、美しいプロジェクションマッピングで『星の王子様』(サン=テグジュペリ)や『魔女の宅急便』(角野栄子)など、名作のワンシーンが紹介され、物語の世界を創造する楽しさを味わうことができます。

〈中之島図書館〉と〈こども本の森 中之島〉。それぞれまったく違う目的や歴史を有する建築ではありますが、そのなかに物語や知性を抱く市民のための建築であるという点は同じ。それぞれの魅力を確かめに、ぜひ足を運んでみてください。

記事の内容は掲載日 (2021年10月) の時点の情報です。

INFORMATION

大阪府立中之島図書館

大阪市北区中之島1-2-10
9:00 am - 8:00 pm (月~金)
9:00 am - 5:00 pm (土)
日祝休館 (3月6月10月 第2木曜日)

INFORMATION

こども本の森 中之島

大阪市北区中之島1-1-28
9:30 am - 5:00 pm
月曜休館
(入館はHPで要事前予約)

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