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歴史を知るとより美味しい、大阪・粉もん食文化

お好み焼きやたこやき、うどんなど、大阪と言えば「粉もんグルメ」が有名ですが、その歴史やルーツについては意外に知らないもの。今回は、粉もんをもっとおいしく味わうために、粉もん文化が大阪でどのように花開いたか、紐解いてみましょう。

日本コナモン協会を訪ねて

今回、大阪の粉もん文化について教えてくれたのは、日本コナモン協会・会長、熊谷真菜さん。熊谷さんは大学時代、たこやきをテーマにした卒業論文を発表したのをきっかけに、本格的にたこやきの調査をスタート。1993年には初の研究書『たこやき』を刊行し、以降、数々の著書を出版されています。2003年には粉もん文化の普及と継承を目的とした日本コナモン協会を設立。現在は日本コナモン協会・会長のほか、食文化研究家、タコヤキスト、フードマーケティングデザイナーとして幅広く活動されています。

今でこそ「粉もん」という言葉は全国で普及していますが、実は定着してからまだ20年も経っておらず、熊谷さんはこの粉もんという言葉を世に広めた立役者と言われています。
「もともと粉物、捏ね物、という表現は、日本各地の粉どころでは日常的に使われていたようで、粉もんは『大阪ことば事典』にも掲載されていませんし、大阪弁ではないんですよ。“コナモン”って響きは何かのキャラみたいにも聞こえますし、インパクトもあるので、協会名にしたんですが、それ以降、メディアで協会や大阪の粉もんグルメが取り上げられる機会が増え、粉もんと言う言葉が一気に広まった印象です」

お好み焼きのルーツは千利休の菓子にあり!?

大阪の粉もんグルメと言えば、お好み焼き、たこやき、うどん、いか焼き、串カツが有名ですが、その主原料はすべて小麦粉(メリケン粉)。そのルーツについても熊谷さんにうかがってみました。

「日本では古代から小麦を粒のまま煎ったり炊いたりして食べていたようですが、それではおいしくないですよね。小麦を粉にして調理するようになったのは中国から石臼を使って小麦を粉にする製粉技術が伝わった奈良時代以降。日本麺文化のルーツと言われる三輪素麺が誕生したのも奈良時代と言われています」

そして「小麦粉を溶いて焼く」という調理法は、千利休が始めたものだとか。
「千利休が茶の席で供し、豊臣秀吉も食したという茶菓子、ふのやきです。これはお好み焼きのルーツのひとつであると言われています。私も京都の和菓子店の店主が再現して作ったふのやきをいただいたことがありますが、水で溶いた小麦粉を薄く伸ばして焼いたものに味噌が塗ってあり、抹茶によく合う味でした。その当時、ふんわり、もっちりとした食感の食べ物はほかにはなく、大発見だったと思いますよ」
とは言え、その頃には小麦粉は高価なもので、庶民が小麦粉を口にするようになったのは江戸時代以降だそう。
「江戸時代末期には水で溶いた小麦粉にいろんなものを混ぜて焼いて食べる習慣が広まり、明治時代には洋食店に憧れた庶民の間では、メリケン粉やキャベツ、ソースを使った「洋食焼」が人気になりました。1枚一銭で売られていた時代は「一銭洋食」として親しまれ、戦前には屋台も多く登場し、庶民の味として定着しました」

出汁と粉もんの文化の融合、大阪うどん

お好み焼きと並び、大阪粉もん文化を語る上で外せないのが、うどんです。大阪のうどんと言えば、昆布や節をしっかり感じる出汁が特徴的ですが、こちらもどういう歴史があるのでしょうか?
「江戸時代、天下の台所だった大阪には多くの食材が集まってきました。北前船で運ばれてくる真昆布は水につけておくだけでいい出汁が出て、大阪の軟水との相性が抜群だったんです。さらに、いりこや鯖節、煮干しとの相乗効果で、おいしいうどん出汁が完成し、かけうどんが広まっていきました。大阪人は、かけうどんで出汁と粉もんのマリアージュを知り、その後、お好み焼きやたこやきも出汁を効かせるようになったと思われます」

実は好相性なお好み焼きとワインのペアリング

大阪では、それぞれの家庭にお好み焼きの味があり、それが代々継承されていたり、専門店によっても配合や作り方、楽しみ方もさまざまです。
〈Zentis Osaka〉から徒歩5分、北新地にある〈tanpopo〉では、20年前からお好み焼きとワインのペアリングを推奨しています。お好み焼きのソースには、野菜や果物がたくさん含まれ、スパイスも使われていたり、ワインと合わないわけがありません。

「お好み焼きのソースがしっかりしているから、濃い目の赤が合うと思われがちなんですが、逆にどっちの味もぼやけてしまって。赤なら、ミディアムボディの果実味のあるタイプがおすすめです。スパークリングワインは万能ですし、白ワインもスッキリ軽めのものはお好み焼きに負けて物足りなく感じるかもしれませんが、それ以外はよく合います」と、オーナー、神谷圭介さん。

お好み焼き自体も、生地は少なく、キャベツが優勢で、蓋をしてじっくり蒸し焼きにすることで、キャベツの甘味を感じ、粉が少ない分、重たさもありません。
「北新地という場所柄、2軒目やワインバーとしての利用も多いので、お好み焼きをアテに飲めるよう、軽い食感に仕上げています」

大阪の粉もん文化を掘り下げると、大阪人の食へのこだわりや好奇心、創意工夫が見えてきます。さらに、板前割烹や回転寿司も大阪発祥であり、食事をおいしく楽しんでもらいたいと思う大阪人のサービス精神は脈々と受け継がれ、旅行者が訪れても親しみやすく、温かく受け入れてもらえます。

記事の内容は掲載日 (2021年10月) の時点の情報です。

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tanpopo

大阪市北区曽根崎新地1-10-16 永楽ビル6F
☎06-6344-2888
2:00 pm~10:00 pm 日休
* 現在は営業時間・休みを変更し、営業

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