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遊覧船「御舟かもめ」で川から眺める大阪の魅力

大阪は“水の都”と呼ばれるほど水路が発達した都市です。そんな大阪で注目を集めているのが遊覧船「御舟かもめ」。定員10名の小さな船に乗り、のんびりと水辺の景色を眺めることができます。船長・中野弘巳さんの操縦で、ゆるやかに出発します。

「川に浮かぶ小さなおうち」で巡る大阪の近代建築

大川のほとりにある八軒家浜船着場(はちけんやはま ふなつきば) には、さまざまな船が発着します。なかでも、とりわけ愛らしい姿をしているのが木造の遊覧船「御舟かもめ」。
ウッドデッキがあり、ふかふかのクッションが並んでいます。冬にはこたつも設置され、なんだか友達の家を訪れたようなアットホーム感。

「川に浮かぶ小さなおうちをイメージしました。家でくつろいでいる雰囲気を味わっていただきたくて、あえて靴は脱いでもらっています」 (中野さん)

元は真珠の養殖作業をする船だった。横幅が広く、足をぐんとのばしてリラックスできるサイズに一目ぼれし、客船に改造したのだそうです。
川からの眺めは壮観。国の重要文化財である大阪市中央公会堂、世界屈指の中国・韓国陶磁のコレクションを誇る大阪市立東洋陶磁美術館など、レトロモダンな近代建築を一望できるのです。

「中之島は海外のお客さまから特に好評です。皆さん『大阪にもこんな落ち着いた場所があるんだね』と驚きますね」 (中野さん)

テレビディレクターから遊覧船の船長へ意外な転身

船長の中野さん、実は前職がNHKのディレクターという異色な経歴の持ち主。ドキュメンタリーや教育番組などを制作していたそうです。
そんな中野さんが畑違いな船を選んだきっかけは、同じく船長である妻の吉崎かおりさんにありました。

「二人とも川が大好きで、妻はさらに勤務先の設計事務所が関わっていたNPOの活動をきっかけに水上タクシーに乗るようになり、大阪の川は私たちの生活の一部になったんです。『それなら小さな遊覧船で川を案内したら楽しいのではないか」』と考え、30歳を機に独立しました」 (中野さん)

そうして2009年、御舟かもめを起業。ローマ字で書くと「KAMOME」ではなく「CAMOME」。これには理由が。

「渡り鳥のような自由さに憧れ、かもめと名付けました。するとデザイナーが『だったらKよりCのほうが柔和な印象になるよ』と助言をくれたんです。海外のお客さまはキャモメと発音されますね」 (中野さん)

航路は中之島だけではなく、コースや時間、季節によって、さまざまな景色を見せてくれます。毛馬桜之宮公園ならばその名の通り春には桜が満開。大阪城はお濠まで接近してくれます。

東横堀川では両岸から水が発射され、びっくり。この噴水は水門が開閉する際に「近づくと危険」という信号なのだそう。どれもこれも、まるで遊園地のアトラクションのようでワクワクします。

「東横堀川の阪神高速の橋脚が並ぶ様子がSF映画のようだと、意外と評判がいいんですよ」 (中野さん)

船は活気あふれる道頓堀へ。グリコの看板を仰ぎながら手を振り合えば、心が通じ合います。
すっかりおなじみのあの看板も、川の上から見上げると、なぜか特別に映るもの。
川から眺める大阪の魅力を、あらためて感じることができます。

ヴィーガン対応の朝食やこたつもあり楽しみ方は多彩

もう一つの名物は土・日・祝の午前中に楽しめる「朝ごはんクルーズ」。有機循環農法を実践する農園「杉・五兵衛」から直送された食材はとびきりフレッシュ。

「ご希望があれば動物性の出汁などを使用しないメニューにも変更できます。新鮮な朝食を楽しみながら、普段とは違う大阪を感じてほしいです」 (中野さん)

ヴィーガンへの対応も万全。この日いただいた葉ごと食べられる人参は自然の甘さがあります。冬にはこたつが設置されるなど、オールシーズン楽しめるのも魅力。
季節ごとに異なる風景や味わいがあり、何度でも訪れたくなります。

川から見る大阪は、普段とは違う表情をしていました。そんな大阪を観察するもよし。うとうと昼寝をするもよし。
何度も大阪を訪れたことがある方も、初めて訪れる方も、この体験をぜひ一度味わってみてください。

※本記事で紹介する内容は、取材のため特別に複数のコースを組み合わせて巡ったものです。
 通常のクルーズとは異なりますので、実際の運航コースは公式サイトにてご確認ください。
 コースの詳細はこちら

記事の内容は掲載日 (2025年6月) 時点の情報です。

INFORMATION

御舟かもめ

大阪市中央区天満橋京町1 八軒家浜船着場
9:20am (始発) - 8:20pm (最終便)
不定休 (貸切は随時受付)

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