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人情溢れる下町商店街の手作り豆腐店を訪ねる

天神橋筋一丁目から六丁目まで南北2.6キロに伸びる日本一長い商店街として知られる“天神橋筋商店街”。古くは菅原道真公を祀る大阪天満宮の門前町として栄え、江戸時代には、天下の台所を支えた天満青物市場や寄席小屋もあり、歓楽街として賑わっていました。現在もアーケードには青果店や日用品店など、昔ながらの個人商店が軒を連ね、今なお古き良き下町情緒が漂っています。今回紹介する「前田豆腐店」は、商店街で店を始めて30年以上を数える古株。「また食べたくなる」豆腐の魅力とともに「また会いに行きたくなる」店主の人柄を紹介します。

15歳から豆腐作り一筋。作りたてが並ぶ豆腐店

スーパーで手軽に豆腐が買える昨今、町の豆腐屋さんがどんどん少なくなってきていますが、「前田豆腐店」にとってはどこ吹く風。開店直後から、ひっきりなしにお客さんがやってきます。

前田一朗さんは15歳の時に、兄・勝征さんとともに奈良の豆腐店で丁稚奉公を始め、30歳で兄弟で独立。摂津市に店舗と工場を構え、現在、前田さんが切り盛りする天神橋筋三丁目商店街の店は今から32年前に創業。73歳になった現在も、毎朝4時に工場に行き、兄弟で豆腐を作り、前田さんが作りたての豆腐を店に運んできています。

健康にやさしい、昔ながらの“本物豆腐”

豆腐作りは、一晩水に浸けた大豆を細かく砕き、それを加熱し、豆乳を搾ることから始まります。そして、豆乳ににがりを混ぜて固めれば、完成です。
しかし最近では、豆乳を何倍にも水で薄めたり、さらには豆乳すら使わず、大豆を丸ごと粉砕した大豆パウダーで作った安価な豆腐も多く出回っています。

一方で、前田さんの豆腐は防腐剤を一切使用していません。
「うちの豆腐は、大豆、にがり、水だけしか使ってへんし、よそとは味が違うよ」と、ニッコリ笑う店主・前田さん。

「にがりを加えても豆乳が濃くないと固まらないんです。豆乳が薄い場合 や、大豆パウダーを使った豆腐には、にがり以外の凝固剤を使っています。うちの豆乳は濃いので、にがりだけで固まるんです。」(前田さん)。

「ここの豆腐を食べたらよその豆腐が食べられへん」と言う常連さんも多く、前田さんの作る豆腐は、大豆の風味や甘みがぐっと押し寄せます。
店頭には、きぬごし豆腐だけでも、こだわり1、こだわり2、まぼろしの3種類が並び、豆乳の濃度が一番高い1丁1500円するまぼろしは大豆そのものの味をダイレクトに感じることができます。

朗らかな人柄で愛される商店街の名物店主

前田豆腐店は、町の豆腐屋さんでありながら、老若男女、いろんなお客さんが訪れるのも特徴的です。

防腐剤を使用していないことから、豆腐や油揚げも冷蔵で3日ほどしか日持ちしません。それにもかかわらず、ご近所さんだけでなく、うわさを聞きつけた遠方からも続々とお客さんが訪れます。そして、店を初めて訪れたお客さんには、店が混んでいない時は、豆乳を試飲してもらったり、前田さんが豆腐のおいしさや食べ方を親切丁寧にレクチャーしてあげたりします。

さらに、今や天神橋筋商店街は大阪を代表する通りになり、観光客も増加中。
豆乳プリンを買ったツーリストにも「ここで食べ」とイスを出してくれたり、気遣いに癒やされます。

また、買い物客だけでなく、店前を通り過ぎるご近所さんともニッコリ手を振り合っていたり、前田さんを見ているだけでもほのぼの温かい気持ちに。
豆腐店と言うと、地元ユースに思われがちですが、昔ながらの製法で作る豆腐と親しみやすい人柄に触れ、旅行者にとっても、古き良き大阪の食文化を感じられる場所になること間違いなしです。

INFORMATION

前田豆腐店

大阪市北区天神橋3−4−9
11:00 am - 7:00 pm
年中無休

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