東の銀座と並び称される西日本一の高級歓楽街、北新地。そのなかでも、「クラブ山名」は政財界の重鎮が通う老舗クラブです。今回は、88歳になった今もなお精力的に活動している山名和枝さんに、北新地の魅力や大人の社交場としての役割、接客の極意について話をうかがいました。
北新地とともに時代を歩んできたレジェンドママ
24歳からクラブで働き始めた山名和枝さんですが、きっかけは意外にも“音楽”だったという。
「その当時、ラテン音楽がはやっていて、私もメキシコのラテン音楽グループの「ロス・パンチョス」のファンだったんですが、なんとロス・パンチョスが来日し、大阪・堂山のクラブで3日間演奏されることを知って。それで、それが見たくて3日間の期間限定でホステスとして働かせてもらうことになったんです。そしたら音楽もさることながら、来店されるお客様も普段お目にかかれないような方々や、新聞に出ているような著名な方ばかりでした。そのお客様の魅力に圧倒され、そのまま働かせてもらうことになりました」(山名さん)。
堂山のクラブでホステスの体験を経て、その2ヶ月後には、北新地のクラブで働くこととなった山名さん。その後も、店を変わったり、引き抜かれたり、ホステスとしてのキャリアを着々と築いていき、1968年(昭和43年)に独立。「クラブ山名」としてお店を開業し、同時期にプライベートではご子息を出産されました。
山名さんにとって大きな転機が訪れることになったのは、それから7年後の1975年(昭和50年)。当時、高級クラブ「クラブ太田」として知られていた場所を譲り受けることになったのです。そして、その場所こそが現在の「クラブ山名」であり、今年で56年目を迎える歴史ある店として営業を続けています。
今では政財界や有名人、大企業の幹部、経営者など、多くのVIPに愛され、北新地を代表するクラブとして広く知られる存在となっています。
「店を辞めようなんて思ったことは一度もないですね。夜、クラブに飲みにくる男性はキラキラ輝いていらっしゃいます。そんなお客様の魅力でここまでやってこられたと思っています」(山名さん)。
88歳の現在も毎日出勤、第一線で活躍
インタビューの当日、現れた着物姿の山名さんは、髪の毛をきちんとセットされ、ネイルもキラキラと、年齢を感じさせない若さと美しさ。なんと現在も店に毎日出勤されているという。
「ただ飲んで遊ぶだけやったら、私じゃなくていいですが、話をもっと聞きたいと思われる男性には喜ばれますね。56年新地で店をやってきましたし、すべて目で見て経験してきたことですから」(山名さん)。
店が終わった後も伝票の整理などをすると、家に帰るのは早くて2時、3時に。さらに、北新地社交料飲協会では副会長を務め、会合や全国総会に参加されるなど、店の外でもアクティブに活動していらっしゃいます。
感謝の気持ちを忘れない。通いたくなる店造り
「いつの時代も、男性にはがんばってもらわないと。安いとこばかり探している男性は北新地のクラブには来られませんが、時代は変われど、がんばっている“かいしょもん”(※)がいらっしゃり、そういう方が飲みに来てくださいます。一晩くらい贅沢しよかって思う方はいっぱいいらっしゃいますし、そういう気持ちをいかに続かせるかはホステスの力やと思っています。最初から毎晩通おうなんて思っている方はいらっしゃいませんし、それを週1回、来てもらうようにホステスもがんばるんです。お客様は高いことを承知できてくださっているわけですし、期待外れにならないよう、努力しなくてはいけません。『羽振りがいいから使わせよう』では、絶対、お客様にも見透かされます。今は悠長な時代じゃないでしょ。そのなかで来ていただくことは大変うれしいことですし、この仕事をしているから、いろんな方にお目にかかれるわけです。心からの感謝は顔に出ます。こういった心構えは、若いホステスにも伝えていきたいですね」(山名さん)。
※かいしょもん:大阪弁で頼りになる人の意味。
記事の内容は掲載日 (2024年6月) の時点の情報です。
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クラブ山名
大阪府大阪市北区曾根崎新地1丁目6番19号山名ビル4・5階
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